私はスター?


10年余り前、中国遼寧省のとある田舎の村で工場を訪れた時の事です。

工場見学を終え、その工場の見本室に入って驚きました。なんとキレイに掃除してあります、床には包装紙を敷き詰めてあり部屋に入るのが気の毒なくらいでした。

最近は少しマシになってきつつありますが、特に工場制手工業の工場の管理や待遇は散々たるものがありました。工場内や見本室は掃除が行き届いていなくて汚く、食物の袋やカスが散らばっている事も多々ありました。トイレ何ぞは野つぼ同然(当然ドアなんぞ無い)、前の畑に駆け込んだほうがよっぽどマシ!
中学高校を卒業した若い男女が工員・職人として労働するわけですが、彼・彼女達は蚕の棚床のような部屋に8〜16人で詰め込まれる事になります。当人達には比較対照するものが無いのでそれなりの生活を送っていますが、我々から見ると気の毒な限りです。

しかしこのような生活環境では、当然造っている物に対する見方や価値観が我々の認識とはかけ離れてきて、造っている物に対し悪影響を及ぼします。今中国は大発展を遂げつつありますが、同じく国営企業などの問題も多く抱えている事も否めない事実です。問題点や対策などとてもこのページでは紹介しきれませんが、取り敢えずやって欲しい事があります。
トイレを清潔にする事と、下っ端工員の環境改善です。これには余り金もかからないと思います。徐々にでも生活環境を改善して行けば、価値観も変わり品質も向上します、そして益々経済が発展し中国は富み栄える?言いすぎかも知れませんが案外改革開放政策を推し進めて行く上での根本的な問題がここら辺りにあるのではなかろうかと思います。

話しが随分横道にそれてしまいましたが、何しろ徒然ですご容赦下さい。

さて、そう言う事でこの工場の見本室を訪れた時は掃除が行き届き、全て磨き上げられていたので感謝感激!そこであれこれと品物を物色し、いざ商談に入ろうとしたところ(私でも仕事はしています!)、「ここは手狭だから場所を移ってください」とこ事。ここで充分です話しを続けましょうと言っても許してくれません。「見本も全部別の場所に移しますから」と言って、身柄を拉致?されてしまいました。

車に押しこまれ暫らく走って着いた所がなんと、この村の党本部のようです!ここで打ち合わせをしてくれとの事。えら〜い人達のご案内で、通された会議室はなかなか広く例によって四方にソファーや肱掛椅子を配置した中国式の応接室でした。中央にはテーブルが並べられており、見本もチャンと展示してありました。これも例によって、季節の果物やお茶もちゃんと置いてあります。まさにVIP待遇!

それではと打ち合わせを始めようとすると、「10〜15分程時間を下さい」と言う。「実はこの村に外人が仕事できたのは始めて」との事。「??」 「そこで地元とテレビ局が取材に来ているので応じて欲しい、いや普段のままで商談をやってくれていればいいんです」との事。 「???、なんだそれは!」 結局断るわけにも行かず応ずる事にしましたが、すぐにスタッフが入ってきました。でっかいテレビカメラかビデオカメラを肩に担いでいます。何食わぬ顔で商談をしようとしましたが、素人の悲しさ視線がどうしてもカメラの方にチィラチィラいってしまいます。カメラは我々だけでなく党や村のえら〜い人達もまんべんなく写して行きます。何とか無事に撮影を終え、スタッフは帰って行きました。今夜のニュースで放映するようです。

幸か不幸か私にはそのニュースを見る機会がありませんでしたが、見た人によれば主役?が良くて!なかなかの出来であったようです。テレビに出た事なんぞ後にも先にもありませんが、いずれにしても私が共産党のプロパガンダに一役かった事だけは間違い無いようです。